『サンザシの樹の下で』

『サンザシの樹の下で』は今時珍しい純愛の物語である。
手もろくに握れない。だからキスシーンもある訳がない。一緒の布団で寝ただけで妊娠してしまうと思い込んでいる。
今なら思春期にもなって、そんなことがわからない人間はいないと思うが、そういう設定が成り立つためには1970年代初頭という時代設定が必要だったんだろうな。
背景には文化大革命という毛沢東による粛清運動があり、スンは党幹部の息子、一方ジンチュウの父は走資派として投獄されている。身分違いの恋どころか、特にスンにとっては危険な恋である。
しかし、そういうことは余り直截的には表現せず、二人の障害のある恋に焦点を絞っている。
この二人が初々しい。